文化施設に足を運ぶ市民を増やす取り組み!図書館などのポイント施策をご紹介
図書館・博物館・美術館・動物園・水族館といった文化施設・公共施設において、ポイントサービスが実施される事例が増加中です。
施設を運営する組織・団体には、さまざまな形態(自治体・財団法人・株式会社など)があり、営利事業のケースもあれば非営利事業のケースもありますが、運営組織・団体の形態に関わらず、ポイントサービスを実施すれば、より多くの市民に施設に足を運んでもらいやすくなるでしょう。
本記事では、各種文化施設のポイントサービスについて徹底解説します。施設運営者にとって参考になる情報ですので、ぜひご一読ください。
<この記事のポイント>
ポイント1 各種文化施設においてポイントサービスが実施される事例が増加中
- ポイント2 ポイントサービスは、市民が各種施設に足を運ぶインセンティブになる
- ポイント3 営利・非営利の違いや施設の特性を踏まえたポイント施策を展開しよう
目次[非表示]
文化施設・社会教育施設の役割
文化施設・社会教育施設(図書館・博物館・美術館・動物園・水族館など)は、文化的な活動や社会教育活動を支える施設です。さまざまな資料・物品・生物の収集・飼育や、各種調査・研究を実施しており、子どもの教育や大人の生涯学習に役立ちます。
運営形態は多種多様であり、国や自治体が運営主体である施設もあれば、民間の法人(株式会社・財団法人など)が運営主体である施設も存在します。
近年、文化施設・公共施設においてポイントサービスが実施される事例が増加中
2024年時点では、スーパー・コンビニエンスストア・家電量販店・飲食店といった一般的な店舗・商業施設におけるポイントサービスの実施は、もはや珍しいことではありません。加えて、さまざまな文化施設・公共施設(図書館・博物館・美術館・動物園・水族館など)においても、ポイントサービスが実施される事例が増加中です。
「ポイントサービスは、文化施設にマッチしない」というイメージもあるかもしれませんが、今やそんなことはありません。お寺や神社においてもポイントサービスが実施され、受け入れられている時代です。より多くの市民に施設を訪れてもらうための手段として積極的にポイントサービスを活用しましょう。
なお、お寺・神社のポイントサービスについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
お寺や神社がポイント制度を導入!最新のマーケティング施策をご紹介
文化施設・公共施設がポイントサービスを実施するメリット
以下、文化施設・公共施設(図書館・博物館・美術館・動物園・水族館など)がポイントサービスを実施するメリットをご紹介します。
利用者の満足度やリピート率の向上につながる
すでに施設を知っていて利用してくれているユーザーにとっては、ポイントサービスの存在は満足度の向上につながるでしょう。また、複数の施設で迷った場合も、「ここはポイントが貯まるから行こう」といったように選ばれるきっかけになるかもしれません。ポイントサービスが、リピート率の向上を助けることになるでしょう。
ポイント制度をきっかけとして施設の存在を認知してもらえる
本・美術品・動物などに興味・関心がない市民は、図書館・博物館・美術館・動物園・水族館といった文化施設・社会教育施設が自宅の周辺にあったとしても、そもそも施設が存在すること自体を認知していないかもしれません。
幅広い市民に自施設の存在を知ってもらうために、ポイントサービスを実施したうえで、市民が頻繁に利用したり立ち寄ったりする場所(電車の駅・車両内、バス車内、市役所など)に内容を記載した印刷物を掲示しておくことも周知につながるでしょう。
ポイ活に励む市民であれば、ポイント制度をきっかけとして施設の存在を認知することにつながり、展示物などにも興味・関心を持ってくれる可能性があります。
市民が施設に足を運ぶインセンティブになる
施設に足を運ぶためには、一定の交通費や時間を要します。存在を認知していたとしても、興味・関心の程度が低かったり、日々の仕事・家事で忙しかったりする場合は、施設を訪れないかもしれません。
ただし、「ポイントを受け取れるのであれば、時間に余裕があるタイミングで立ち寄ってみよう」と考える市民もいるでしょう。ポイント制度を実施すれば、施設を訪問するかどうかを迷っている市民の背中を後押しする効果を期待できます。
文化施設・公共施設におけるポイントサービスの具体例
ここからは、各種文化施設・公共施設(図書館・博物館・美術館・動物園・水族館など)で実施されているポイントサービスの具体例をご紹介します。
図書館のポイントサービスの例
「大阪市立図書館」(大阪府大阪市)や「日立市立図書館」(茨城県日立市)では、「としょかんポイント」という名称の独自ポイントを付与する施策を実施しています(同じ名称であるものの、それぞれ別のポイント)。
大阪市内に24館ある大阪市立図書館では、毎年、夏休みの来館促進をターゲットとして期間限定の形式で「としょかんポイント」の施策を行っています。図書館に設置されている端末にカードのバーコードをかざすことで1日1ポイントが貯まり、入館で1日1ポイントが、本を借りると1点につき1ポイントが、クイズに回答すると50ポイントが付与され、貯まったポイントは各種景品(2024年に関しては「ミャクミャクぬりえ」「ミャクミャクシール」など)と交換可能です。貯まったポイント数は端末でも図書館のHPで確認できます。このキャンペーンは年齢制限なく、大人も子どもも利用可能です。
日立市内に4館ある日立市立図書館の「としょかんポイント」は3歳から中学3年生までが対象。図書館に入館した際に「としょかんりようポイントカード」に1個スタンプを押してもらえる仕組み(本を借りたかどうかは不問)で、所定の期間内に6ポイントを集めると記念品を受け取れます。
また、モダンな建築美でも注目される「武雄市図書館」(佐賀県武雄市)は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が指定管理者として運営していることから、独自ポイントではなく、「Vポイント」を付与していることが特徴です。Vポイントが貯まるカードで図書館の利用手続きをし、セルフカウンターに通して図書等の貸出を行うことで、1日1回3ポイントを貯めることができます。有人カウンターの場合はポイントが貯まらないことから、セルフカウンターの利用促進の意図もあると推測できます。
なお、文部科学省が2017年に公表した「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」の結果によると、不読書(1ヶ月間に読んだ本の冊数が0の割合)は以下の通りです。
- 小学生:1割未満
- 中学生:約1~2割
- 高校生:約3~4割
年齢が上がるにつれて、不読率が上昇しています。「ポイント」というインセンティブがあれば、図書館に通う市民が増加し、不読率の低下につながると考えられます。
博物館・美術館のポイントサービスの例
博物館・美術館でも、ポイントサービスを実施している事例があります。例えば、公益財団法人東日本鉄道文化財団が運営する「鉄道博物館」(埼玉県さいたま市)の場合、入館料金や食事代などをSuicaで支払うことができるため、JRE POINTが貯まります。
また、六本木ヒルズ森タワー53階の「森美術館」(東京都港区)では、ヒルズポイント(ヒルズアプリおよびヒルズカードMastercardの対象施設・店舗で獲得・利用できるポイント)に対応しており、専用サイトでチケットを購入するとポイントを獲得可能です。
日常的にJRE POINTやヒルズポイントを利用している方が、ポイントが貯まることを知って鉄道博物館や森美術館に興味・関心を持ち、繰り返し来場する熱心なファンになるケースもあるでしょう。
動物園・水族館のポイントサービスの例
動物園・遊園地・プール施設などが融合したハイブリッド・レジャーランド「東武動物公園」(埼玉県宮代町)では、TOBU POINTを貯めたり使ったりすることが可能です。また、東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6Fにある「すみだ水族館」(東京都墨田区)もTOBU POINTの加盟店であり、ポイントの獲得・利用に対応しています。
TOBU POINTに対応した店舗(東武百貨店やファミリーマートの一部店舗など)を日常的に利用している消費者は、「普段から貯めているポイントを獲得可能」という点を踏まえて、東武動物公園やすみだ水族館の訪問を決める場合もあるでしょう。
営利・非営利の違いや施設の特性を踏まえたポイント施策を展開しよう
文化施設・公共施設では、「営利事業・非営利事業の違い」や「施設の特性」を踏まえてポイント施策を立案・展開することが大切です。以下、どのようなスタンスで臨むべきなのかを解説します。
営利事業として施設を運営する場合
企業が営利事業として施設を運営し、ポイント施策を展開する際は、基本的にはスーパー・コンビニエンスストア・家電量販店・飲食店といった一般的な店舗・商業施設に対するケースと同じスタンスで臨むと良いでしょう。すなわち、「どのようにすれば、新規顧客の獲得につながり、リピート客が増加するか(売上が拡大するか)」という観点から、ポイントのネーミングや交換可能な景品類の選定などを実施してください。
昨今、私企業であっても社会的責任(CSR)を踏まえた経営姿勢が求められますが、会社の主な存在理由・目的はあくまでも「利潤の追求・最大化」です。ある程度の利益が出なければ、施設の運営が困難になったり、会社の経営を続けることが難しくなる可能性があるため、注意が必要です。
非営利事業として施設を運営する場合
国・自治体が運営する公共施設や、民間の財団法人などが非営利事業として運営する施設で、「税金」「保有資産の運用益」「企業・個人からの支援・寄付」などによって財務基盤が盤石な場合は、「利潤の追求」を最優先事項として掲げる必要はないでしょう。
もちろん、厳しい財政状況が続く昨今、税金の無駄遣いは批判の対象になりますし、保有資産の運用益や企業・個人からの支援・寄付があったとしても、無制限に予算を組むことはできません。しかし、資金面で不安がないのであれば、「市民により多くの本を読んでもらう」「優れた美術品を実際に目で見て、豊かな人生を送ってもらう」など、「利潤の追求」以外の目的を主として、施設を運営することが可能です。
ポイント施策も、「利潤の追求」という面から離れ、「市民に生涯学習を促す」「文化的な水準を向上させる」といった観点から、立案・実施することが望まれます(例えば、「交換可能な景品を、ペン・ノートなど、生涯学習に役立つ物品にする」など)。
各施設の特性も考慮しよう
「営利事業なのか、非営利事業なのか」という観点・切り口に加えて、「施設の特性」もポイント施策を立案するうえで考慮するべき要素です。
例えば、博物館の場合、「展示内容に関連したオリジナルグッズ」をポイント交換景品にすれば、訪問者が熱心なファンになり、リピートしてくれる可能性が高まります。また、動物園や水族館の場合、飼育している動物・魚に関連したグッズを交換景品に選定すれば、訪問者の満足度が向上し、施設の再訪につながるでしょう。
まとめ
昨今、スーパー・コンビニエンスストア・家電量販店・飲食店といった一般的な店舗・商業施設だけではなく、各種文化施設・公共施設(図書館・博物館・美術館・動物園・水族館など)においてもポイントサービスが実施される事例が増加中です。
近年、お寺や神社といった信仰の場においてもポイントサービスが実施されています。そのため、「文化施設には、ポイントサービスは適さない」と消極的になる必要はありません。より多くの訪問者を獲得するために、また、ユーザーが文化施設にまつわる文化そのものを身近に感じるように変化していく、行動変容を促すという意味でも積極的にポイントサービスを実施しましょう。ただし、営利事業・非営利事業の違いや自施設の特性を踏まえ、慎重にポイント施策を立案することが大切です。
独自ポイントを展開している場合は、他社ポイントと交換できる仕組み(ポイント交換サービス)を利用者に提供することも選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。例えば、ジー・プランの「ポイント・コンセント」や「PCT LITE」なら、独自ポイントと他社ポイント(共通ポイントなど)との交換が可能になります。独自ポイントがなくても、「美術館へ足を運んだ」「図書館で本を借りた」というようなユーザーの行動に対して直接ポイントを付与することもできます。どちらの場合も、利用者の満足度が向上し、自施設への訪問頻度の増加につながるでしょう。
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