Yahoo!の新サービス「おトク指定便」を例にポイントを導入するメリットを考える
2023年4月11日、Yahoo!が新たなサービス「おトク指定便」をリリースしました。
Yahoo!ショッピングで余裕のあるお届け日が指定されると、その配達日に応じたPayPayポイントをストア側が付与する、という、ユーザーの行動でポイント数が可変するサービスです。
一見するとユーザーの満足度を第一に考えたサービスのようですが、プラットフォームを運営するYahoo!、商品を出店するストア、配送する運送会社の利便性を高める意図もあると考えられます。
そこで、今回はYahoo!の「おトク指定便」を例に、自社サービスに可変ポイントを導入する企業側のメリットを考察してみましょう。
また、Yahoo!「おトク指定便」のほかにも可変ポイントが導入された事例、今後の展開についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
ポイント1 ポイントを上手に活用すればユーザーの行動を誘導できる
- ポイント2 ユーザーの行動を誘導することで、働く人の負担軽減が可能
- ポイント3 働く人の負担軽減により、サービスの質の向上を実現
目次[非表示]
- 1.Yahoo!の新サービス「おトク指定便」とは
- 2.可変ポイントを導入する企業側のメリット
- 2.1.ユーザーを意図する方向に誘導できる
- 2.2.サービスの中の人が働きやすくなる
- 2.3.サービス全体の質を高められる
- 3.可変ポイントを活用するアイデア
- 3.1.先行予約でポイント付与
- 3.2.月末はポイントを2倍配布
- 3.3.時期外れの商品はポイント5倍
- 4.スマートチェックインでポイント付与の実証試験にも注目!
- 5.【まとめ】
- 6.おすすめの資料はこちら
Yahoo!の新サービス「おトク指定便」とは
「おトク指定便」とはYahoo!ショッピングで「最短お届け日」よりも遅いお届け日を指定すると、配達日に応じて最大100円相当のPayPayポイントをユーザーに付与するサービスです。
付与するポイント数は、商品を出品するストア側が設定できます。
再配達による物流の負担増が背景にある
現在、Yahoo!ショッピングを利用するユーザーの約8割が「お届け日を指定せず」に注文しており、このような場合に各ストアは「最短お届け日」で出荷するのが一般的です。
しかし、ユーザーの予定が不明確なまま出荷されると、配達時にユーザーが不在で再配達になることが珍しくなく、この負担はEC・通販業界、運送・物流業界における大きな問題となっています。
今回、Yahoo!はこのような背景を受けて「ポイントを付与する」というメリットを提供することでユーザーに予定を明確にしてもらい、再配達を減らしたい意図があると考えられます。
可変ポイントを導入する企業側のメリット
Yahoo!の「おトク指定便」のように、ユーザーの行動によって付与するポイント数が変わる可変ポイントは、ユーザーだけでなく、企業側にもさまざまなメリットがあります。
ユーザーを意図する方向に誘導できる
具体的なメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
- 似たようなサービスがあったとき、ポイントが貰える方のサービスを選ぶ
- あと少し出せばポイントの割合が増えるなどの場合、予定より多めに購入する可能性が高まる
このようにポイントを起点に、自身の行動を決定するユーザーは多いでしょう。
つまり、企業側の視点で考えたとき、ユーザー心理を理解してポイントを上手に活用すればユーザーの満足度を向上させられるだけでなく、意図する方向に誘導できるわけです。
サービスの中の人が働きやすくなる
Yahoo!の「おトク指定便」を例にあげると、ポイントが貰えることでユーザーが積極的に配達日を指定(予定を確定)するようになれば、以下のようなメリットが生じます。
- ストア側:出荷作業の負担の分散・軽減になる
- 運送会社:再配達による負担増加を回避できる
このように、ポイントでユーザーの行動を誘導できれば、サービスを運営する上での課題点を取り除き、中で働く人たちの負担を軽減することも可能となるでしょう。
サービス全体の質を高められる
ポイントを上手に活用してユーザーを誘導し、サービスの課題や中で働く人たちの負担を軽減できれば、それだけ働く人たちに時間的、精神的な余裕が生まれてきます。
働く人たちが個々の業務の効率化や質を高めることに集中しやすい環境になるわけで、ひいてはサービス全体の質、ユーザーの満足度を高めることにもつながるのです。
あくまでも使い方しだいではありますが、企業が自社のサービスに可変ポイントを導入することはユーザーも、働く人も、サービスにもメリットがあるわけです。
可変ポイントを活用するアイデア
企業が自社サービスに可変ポイントを導入するメリットをお伝えしたところで、可変ポイントを活用するアイデアをいくつか考えてみましょう。
先行予約でポイント付与
新商品などを発表する際に、先行予約者を対象としたポイントを配布する方法です。ユーザーは欲しい商品を早く確実に確保できるうえにポイントまで貰えるので満足度が高くなりますし、企業側は新商品などの売上を早期に確保できます。
月末はポイントを2倍配布
月末(例えば、毎月29・30・31日)はポイントを2倍にして配布する方法です。日本企業の多くは25日頃が給料日なので月末はユーザーの購買意欲が高いですし、お店側にとっては追い込みをかけたい月末の売上を促進できます。
時期外れの商品はポイント5倍
春先に冬物の服、お正月にクリスマスグッズなどシーズンから少し過ぎている商品を購入してくれる方にはポイントを5倍プレゼントする方法です。ユーザーはポイントの分だけお得に商品を手にできますし、お店側は在庫処分ができます。
このように、季節やイベントごとなどを考慮しながら、企業にあった独自性のある可変ポイントを考えてみましょう。その際の付与基準については、売る側と買う側のバランスを取ることが大切です。
スマートチェックインでポイント付与の実証試験にも注目!
ANA Digital Gateと日立製作所、そしてポイント交換サービスのジー・プランの3社が、2022年7月4日からゴルフ場において、ANAのマイルを含む各種ポイント付与ができる指静脈認証スマートチェックインサービスに関する実証試験を共同で実施しました。
これは、ユーザーが専用端末で初回登録を済ませておくことで、次回からは指静脈認証端末に指をかざすだけでスムーズにチェックインできるというものです。
そして初回登録と、次回以降もチェックインのたびにポイントが付与されます。
これまでゴルフ場ではユーザーが毎回、受付で記帳するのが一般的でした。今回のように受付に指静脈認証端末とポイント付与を導入したシステムは、国内初の試みです。これによりゴルフ場側には受付時のスタッフの負担軽減、効率化が期待されています。
購入金額に応じてのポイント付与ではなく、ユーザーの行動に対するポイント付与という点、また主要目的が顧客サービスや囲い込みに留まらず企業側の負担軽減や効率化にある、といった点で、Yahoo!「おトク指定便」における可変ポイント導入の背景と類似していると言えるでしょう。
今後のスマートチェックインの有用性、ポイント付与による効果検証に注目が集まります。
【まとめ】
本記事では、Yahoo!の新サービス「おトク指定便」をひとつの例に、企業が自社サービスに可変ポイントを導入するメリットについて考察してきました。
- 従来方式の目的:日常の利用で「ポイントが貯まる」というメリットで顧客を囲い込む
- 可変方式の目的:ポイント付与で「顧客を誘導する」ことで企業の経営課題を解決する
このように可変方式のポイントの導入は、企業にとって課題解決の可能性があるものです。ポイントシステムの新しい活用方法と言える施策だけに、サービスとの親和性をいちはやく見出せる企業ほど積極的に導入しようとするでしょう。
ただ、ポイントを導入する際にはその内容を慎重に決めることが大切です。
とくに状況に応じて必要な機能やルールを柔軟に選択でき、スピーディーに導入できるのかが、ポイントを導入したときに成功するかどうかのカギとなります。
しかし、一般の企業がいきなりポイントを使いこなすというのは難しいものです。
そこで、ゴルフ場での実証試験の事例にも登場した「ジー・プラン」のような、ポイントサービスに特化したツール、知識をもつ専門家に相談することをおすすめします。
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