JR東日本のネットバンク「JRE BANK」がスタート
2024年5月9日、JR東日本グループが新たなデジタル金融サービス「JRE BANK」をスタートしました。
京王電鉄が展開する京王NEOBANKをはじめ、金融サービスに参入する鉄道会社が増えつつある昨今。新たに登場したJRE BANKは、サービスの概要が発表されるやいなやユーザーから「太っ腹すぎる」との声が上がるなど、話題に。サービス開始とともに申し込みが殺到し、一時は入会制限が行われるほどに注目を集めています。
JRE BANKは、なぜこれほどまでに注目を集めているのでしょうか。本記事ではそのサービスの概要と特徴、そしてJR東日本グループが金融サービスを展開する狙いを探るべく、解説していきます。
<この記事のポイント>
ポイント1 JRE BANKは、JR東日本と楽天銀行がタッグで展開するネット銀行サービス
- ポイント2 サービス利用によってポイントを獲得できるほか、充実した特典が注目を集めている
- ポイント3 JRE POINTを使ったポイント経済圏の確立と、それによる顧客の囲い込み、マーケティングへの活用が狙いか
目次[非表示]
JR東日本と楽天銀行がタッグで展開する「JRE BANK」とは
JRE BANKは、JR東日本グループと楽天銀行が共同で提供するネット銀行サービス。
楽天銀行の基盤となるシステムを活用しながら、JR東日本ならではの特典やサービスを付加することによって、鉄道利用者に最適化された利便性の高いネットバンクを実現しています。
JRE BANKの主な特徴としては、以下の3つが挙げられます。
特徴①「JR東日本グループのポイント『JRE POINT』との連携」
JRE BANKで取引をすると、JR東日本が展開するポイントプログラムである「JRE POINT」が貯まります。
通常の銀行取引でポイントが貯まるだけでなく、会員ステージによっては最大で3倍まで獲得倍率がアップ。また、デビットカードの利用でもポイントが貯まります。貯まったポイントはJR線の乗車券やSuicaのチャージに使えるほか、各種商品やサービスとも交換可能です。
特徴②「JR東日本グループの特典が充実」
JRE BANKに登録すると、JR東日本グループの関連サービスでさまざまな特典を利用できます。
本記事の冒頭で「太っ腹すぎる」と表現されていたのが、この特典です。運賃が4割引になる優待割引券やSuicaグリーン券のプレゼントなど、普通なら株主優待でもなければ得ることのできない特典が用意されています。これがJRE BANKの話題性にも結びついており、同サービスの大きな特徴であるとも言えるでしょう。
特典③「ATMの手数料が無料に」
上記特典とは別に、ATMの手数料が無料になるのもJRE BANKのメリット。
JR東日本の主要駅構内に設置されている「VIEW ALTTE」での入出金手数料が常に無料になるほか、全国各地の提携金融機関ATMの利用手数料も月7回までは無料に。さらに、JRE BANKを含む楽天銀行宛の振込は回数無制限で無料になり、他の銀行宛の振込も最大月3回までが無料となります。
JRE BANKの狙いは、ポイント経済圏への顧客の囲い込み?
新幹線にも使える4割引の優待券をはじめ、充実の特典で注目を集めているJRE BANK。
JR東日本グループといえば、乗車券としてもキャッシュレスの決済手段としても使えるSuicaですでに大勢のユーザーを取り込んでおり、同ジャンルでは不動の地位を築き上げている印象もあります。にもかかわらず、なぜここまで奮発した特典を引っ提げつつ金融サービスへ参入することを決めたのでしょうか。
その理由を考えるキーワードが、「JRE POINT生活圏」です。
JR東日本が目指す「JRE POINT生活圏」とは
JR東日本グループが4月に公開したリリースに、次のような文言があります。
“JRE BANKを通じて、多くのお客さまにJR東日本グループのサービスをおトクにご利用いただく機会を提供し、お客さまの心豊かな毎日をサポートしていくことで、JRE POINT生活圏を拡充していきます。”
以前からポイントサービスを展開していたJR東日本グループですが、「グループ内で複数の種類のポイントサービスが乱立していて、しかも相互に連携していない」状態でした。JRE POINT以外にも、えきねっとポイントやSuicaポイント、各種商業施設のポイントなどが混乱を招くことがあったのかもしれません。
それらのポイントを一元化するべく、数年かけてJRE POINTに統合。その作業が完了したところでお披露目となったのが、今回のJRE BANKというわけです。
すでにさまざまな店舗で使えるJRE POINTを、さらにおトクに貯めることのできる手段。それも日常と紐づいた銀行口座なら、普段遣いで「勝手に貯まる」状況を作り出せます。ユーザーにとってもメリットの多いJRE POINTを身近に感じてもらうことで、「日常的に利用するポイント」としての立ち位置を狙いに行く、という寸法です。
加えて、マーケティング活用の観点も無視できません。
以前からSuicaの利用データをマーケティングに活用していたJR東日本グループですが、そこにJRE BANKという「銀行口座」が組み込まれることで、より直接的にお金の動きを把握できるようになります。鉄道の乗降データに、買い物の記録、駅構内でのサービス利用に、口座の取引データまでもが収集・分析対象となるわけです。これは、企業マーケティングの視点では非常に大きな強みになると言えるでしょう。
まとめ
以上、JR東日本グループが楽天銀行とタッグを組んでスタートした金融サービス「JRE BANK」について、その特徴と狙いを説明してきました。
ユーザーのあいだでも「おトクすぎる!」と注目を集めているサービスですが、企業目線でも無視のできない、大きな動きだといえるでしょう。先行する京王NEOBANKもそうですが、今後も同様のサービスが他社から出てくる可能性も十分にあります。ポイントプログラムの動向としても、最新のマーケティング事例としても、今後の取り組みも含めてチェックしておきたいところです。
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