鉄道乗車ポイントが続々スタート!2つの事例から読み解く特徴と狙い
近年、鉄道会社が次々に「乗車ポイント」と呼ばれるポイント施策をスタートしています。
JR東日本やJR西日本、東武鉄道や西武鉄道、東京メトロなど、いくつかの企業や路線では以前から存在していた施策ですが、ここ最近になって複数の私鉄も参入。2024年3月には相鉄グループが、4月には京浜急行電鉄が、それぞれ自社のポイントサービスを刷新し、「乗車ポイント」が貯められるようになりました。
今回取り上げるのは、そのような鉄道会社の「乗車ポイント」について。ポイント施策としてどのような特徴があり、どういった狙いがあるのか、新たにスタートした2社の事例から紐解きます。
<この記事のポイント>
ポイント1 電車の利用でポイントがたまる「乗車ポイント」が各社で次々に導入されている
- ポイント2 鉄道利用だけでなく、沿線の店舗でもためて使えるポイントサービス
- ポイント3 ポイント制度の導入によって期待される、鉄道会社ならではのデータ活用
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相鉄ポイント:沿線の商業施設でポイントがたまる!使える!
2024年3月にスタートした「相鉄ポイント」は、相鉄グループの商業施設を対象としたポイントサービスです。対象店舗で買い物をする際に、以下のいずれかのバーコードを提示することでポイントがたまります。
- 相鉄Styleアプリ
- 相鉄ショッピングセンター公式アプリ
- そうてつローゼンアプリ
- 相鉄ポイントカード
相鉄ジョイナスをはじめとする11施設では110円(税込)ごとに1ポイントが、そうてつローゼンでは200円(税抜)ごとに1ポイントがそれぞれたまり、次回以降の買い物で1ポイント=1円として使うことができます。
ただし、相鉄ポイントをためて使えるのは、あくまでも「相鉄グループの商業施設」だけ。それ以外の店舗では使えません。また、「相鉄ポイント」という名称ではありますが、相鉄線の乗車時には付与されないポイントです。相鉄線の乗車時にはまた別のポイントが展開されています。
相鉄ポイントマイル:乗車すればするほど付与率アップ!
相鉄グループは、相鉄ポイントとは別に「相鉄ポイントマイル」というポイント施策も始めています。
少々紛らわしく感じるかもしれませんが、相鉄線の乗車によってたまるのが、この相鉄ポイントマイル。事前に登録したPASMOで乗車すると、条件に応じてマイルがたまります。マイルの付与率は同一運賃区間の利用回数に応じて上昇し、最大8%が付与されます。
たまった相鉄ポイントマイルは1マイル=1円としてPASMOにチャージできるほか、前述の相鉄ポイントに交換することも可能。1マイル=1ポイント換算で、しかも交換するマイルの10%相当のポイントが上乗せして付与されます。
京急プレミアポイント:ためる方法も使い道も多種多様!
一方、2024年4月にサービスをリニューアルした「京急プレミアポイント」は、買い物と乗車の両方でポイントがたまるサービス。事前にPASMOを登録しておくことで、主に以下のような場面でポイントをためることができます。
- 京急線の利用
- 京急沿線の加盟店での買い物
- 駅構内の店舗での買い物
- 駅構内の自動販売機での買い物
- 京急プレミアポイントクレジットカードの利用
- キャンペーンの条件達成
※ポイントの付与率はケースによって異なるため、詳しくは公式サイトをご覧ください。
さらに6月1日からは、「リピートポイント」というサービスもスタート。これは先ほどの相鉄ポイントマイルと同じく、同一運賃区間の利用回数に応じてポイントの付与率が上昇する仕組みです。こちらは最大10%が付与されます。
また、ポイントの使い道もさまざま。基本的には1ポイント=1円として、買い物やPASMOのチャージに使えますが、クーポンや限定商品、ANAマイルと交換することもできます。
乗車ポイントを導入する狙いは?
このように、鉄道会社が相次いで導入を発表している、乗車ポイント。
いずれのサービスも「電車に乗るとポイントがたまる」「同一運賃区間の利用回数に応じて付与率アップ」「沿線での買い物でもたまる・使える」といった共通点を持っていますが、本記事で取り上げた2社の事例を見ると、若干の差異があることも見て取れるのではないでしょうか。
各社ごとに違いはあるものの、乗車ポイントの導入に際しては、主に以下のような狙いがあると考えられます。
1. 顧客満足度の向上
まず真っ先に挙げられるのが、顧客満足度の向上です。
「何もないよりはポイントがたまったほうが得だと感じる」という顧客心理に訴えかけつつ、「乗れば乗るほどたまる」「使い道もさまざま」というメリットも提示する。使えば使うほどたまるポイントの存在によって、鉄道会社と顧客との接点が増え、顧客のエンゲージメントを強化することができます。
また、そもそも鉄道会社が「地域」と切っても切れない存在である、という点も無視できません。
ただ電車に乗ってもらうだけでなく、加盟店や地域の店舗との連携によって、日常の買い物もお得に感じてもらう。そうすることで満足度が高まり、沿線地域の住みやすさや愛着へと繋がることで、魅力的な地域として周囲に評判が広がり、将来的な乗客数の増加にも結びつく――。そのような意図もあるのかもしれません。
2. 利便性の向上
また、新たなポイント制度のスタートによって、顧客と企業の双方にとっての利便性の向上に繋がっている側面もあります。
たとえば、本記事でも取り上げた相鉄ポイントと相鉄ポイントマイル。一見すると「2つあってややこしい」と感じる方もいるかもしれませんが、見方を変えれば、「たくさんあったポイントを『買い物』と『乗車』の2種類に集約した」と言い換えることもできます。
というのも、もともと相鉄グループの店舗では複数のポイント制度が利用されており、お店ごとに別のポイントカードやアプリを提示しなければなりませんでした。つまり、乱立していたポイントサービスを「相鉄ポイント」という共通ポイントに一元化し、わかりやすくした一面もあるわけです。
「買い物」全般に関してはそうして単純化する一方で、「乗車」については新たに相鉄ポイントマイルをスタート。こちらは逆に、用途別に「あえて分ける」ことで用途を明確にした、という見方もできます。
「乗車でたまったポイントはそのままチャージにまわす」と考えればシンプルですし、一方で、買い物用途の相鉄ポイントと交換することもできる。しかもその場合は10%を上乗せして付与することで、顧客目線ではお得に感じられ、企業目線では沿線の店舗利用と顧客満足度の向上に繋がる。一挙両得な仕組みだといえるのではないでしょうか。
3. データの収集&活用
最後に、乗車ポイントを通じた顧客データの収集と活用ですね。
「顧客のデータを収集して分析し、有効活用できる」ことはポイント制度全般にいえるメリットではありますが、乗車ポイントの場合、乗車履歴などの関連データも収集できる点が大きな強みだと言えそうです。
いつ、どの駅で、どのような属性を持つユーザーが乗車して、どこで降りたか。また、駅構内でどのような購買行動をしているか。それらのデータを収集・分析することで、乗客向けのサービス開発や、駅ナカ店舗の選定、さらにはダイヤ編成などの参考にすることもできます。
このように多彩な情報を収集できるポイント制度が、マーケティング目線で非常に大きな意味を持つことは疑いないでしょう。
まとめ
ここまで、相次いでスタートした「相鉄ポイント」と「京急プレミアポイント」の事例を紹介しつつ、鉄道会社の乗車ポイントについて説明してきました。
後半部分でも説明しましたが、乗車ポイントは顧客データの収集や活用に生かせるのみならず、顧客とのエンゲージメントの強化にも繋がる、鉄道会社にとって非常に魅力的な施策です。現時点ではこのような仕組みがない路線についても、今後は乗車ポイントの導入が進むのではないでしょうか。
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