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ポイントプログラムを運営する企業が新収益認識基準で注意すべきこととは?

2021年から収益認識基準に関する新しい会計基準が適用されました。「新会計基準」とされているものは、基本的にはこの新しい収益認識基準を指します。

これは、ポイントプログラムにも影響の大きい内容です。自社でポイントプログラムを運営していてまだ新収益認識基準に対応していない企業は、変更内容を把握して対応していかなければなりません。変更に伴い、ポイントプログラムの運用方針の見直しも必要になるでしょう。

本記事では、2021年から始まった新収益認識基準に関して、ポイントプログラムへ与える影響と注意点について解説していきます。


<この記事のポイント>

  • ポイント1    購入金額に応じてポイントを付与している企業が対象

  • ポイント2 ポイント付与分はすぐには売上計上できない
  • ポイント3 ポイント利用時または失効時に売上計上


目次[非表示]

  1. 1.そもそも新収益認識基準とは?
  2. 2.新収益認識基準においてポイントプログラムの会計処理で変更になった点
    1. 2.1.従来まで広く行われていた会計処理
    2. 2.2.変更後の会計処理
    3. 2.3.処理上、特に注意すべき点
  3. 3.新収益認識基準によるポイントプログラムへの影響
    1. 3.1.ポイント付与率の見直しが求められる高ポイント還元がしにくくなる
    2. 3.2.ポイントの有効期限設定への対応
    3. 3.3.ポイントの利用方法の見直しが必要
  4. 4.新収益認識基準への対応に関するQ&A
    1. 4.1.有効期限切れで失効したポイントの処理はどうするのですか?
    2. 4.2.ポイントの還元率は高くしづらくなりますか?
    3. 4.3.ポイント制度のある全ての企業が対象ですか?
    4. 4.4.マーケティング戦略にはどのような影響がありますか?
  5. 5.まとめ
  6. 6.おすすめの資料はこちら

そもそも新収益認識基準とは?

新収益認識基準は、2021年から適用が開始されました。通称として「新会計基準」と呼ばれることもあります。国際会計基準に合わせる形で、大企業や上場企業、その子会社、関連会社に対して強制的に適用されます。

新収益認識基準が適用される以前までは、収益を計上するタイミングに関して統一された基準はなく、企業ごとにバラバラな状況でした。新収益認識基準を適用することで、収益計上のタイミングが統一されます

新収益認識基準で収益計上されるのは、次の5段階のステップを経た取引です。

  • 契約の識別
  • 履行義務の識別
  • 取引価格の算定
  • 取引価格の配分
  • 履行義務の充足

契約の識別は、契約や注文のことを指します。

履行義務の識別は、商品の引き渡しやサービスの提供など、契約や注文に基づいて行う義務のことです。

取引価格の算定は、対価として受け取る代金や料金が明確に決まることを指します。

取引価格の配分は、代金や料金の合計額に対する、内訳が明確に決まることです。ポイントを付与する場合にはポイントの分は差し引きます

最後の履行義務の充足は、契約や注文に基づく義務を実際に果たすことです。商品を実際に引き渡したりサービスを実際に提供したりしたら果たしたことになり、収益が計上されます。


新収益認識基準においてポイントプログラムの会計処理で変更になった点


新収益認識基準が適用される企業においては、自社で運用するポイントプログラムの会計処理も変更されます。では、従来までの会計処理の方法と比べてどこがどのように変更になったのか見ていきましょう。


従来まで広く行われていた会計処理

従来までは、ポイントを付与した売上に関して、売上金額を全額計上し、ポイント分は大半の企業で引当金として計上していました

そして、ポイントが利用されたときには値引きとして計上して、引当金を取り崩すという会計処理方法です。


変更後の会計処理

変更後は取引価格の配分の段階で、ポイントを付与したらポイントの分を売買代金の金額から差し引きます。従来までと違って、売買代金のうち全額を売上として計上することはできません。ポイント付与分を引いた金額を売上として計上し、ポイント付与分は繰延収益として計上します

例えば、1,000円の商品が売れて、10ポイント付与したとすれば、売上として計上するのは990円で、繰延収益が10円です。

そして、ポイントが利用されたり失効したりしたタイミングで、繰延利収益が取り崩されて売上に計上されます。


処理上、特に注意すべき点

新収益認識基準は、ポイントの付与や利用に関して全般的に適用されるものではありません。あくまで、売上などの収益の発生に伴ってポイントを付与する場合に限られます

ネットサービスなどの中にはログインポイントなどを付与しているところもあるでしょう。実店舗でも入会ポイントや来店ポイントなどを付与しているケースがよく見られます。そのようなポイントは収益の発生とは無関係のため、従来までの方法で会計処理を行います。


新収益認識基準によるポイントプログラムへの影響


新収益認識基準により、世間一般としては、ポイントプログラムに対して次のような影響が出ることが考えられます。


ポイント付与率の見直しが求められる高ポイント還元がしにくくなる

ポイントを付与した分がすぐに売上計上できなくなるため、高い付与率を維持すると、財務状況や利益率に直接影響を与え、予算管理が難しくなることが考えられます。付与率を見直すなど、ポイントプログラムを検討する必要がある場合があります。


ポイントの有効期限設定への対応

顧客が貯めているポイントは、繰延収益として残ります。繰延収益は負債の部に計上されるため、企業としてはあまり好ましいものではありません。負債はできるだけ早くなくなってほしいと考えるのが自然です。

一方でポイントの有効期限が長いと、貯め続けようとする顧客も出てくるでしょう。繰延収益が長く残らないようにするためには、ポイントの有効期限を短く設定せざるをえません。ポイントの有効期限が短いことはユーザーにとってデメリットとなり得ます。リマインダーの送信やポイント利用を促進するキャンペーンの実施、一定額のポイント利用で残りのポイントの有効期限を延長するなど、対応を検討しましょう。それによってユーザーの不満を軽減し、ポイントプログラムの利用促進と顧客満足度の向上を図ることができます。


ポイントの利用方法の見直しが必要

ポイントの利用方法が複雑だったり制限が多かったりすると、企業側としては顧客が長くポイントを貯めてしまうことにつながりますし、顧客側としてもポイントを使い切る前に期限が切れてしまうなど、双方にとってリスクが高まります。

そのため、ポイント利用時の最小単位を引き下げる(100ポイント単位でしか使えなかったものを、10ポイント単位で使えるようにするなど)、多様な交換先を提供するなど、ポイントの利用方法を見直して利用を促進することが重要です。


新収益認識基準への対応に関するQ&A

新収益認識基準への対応に関するQ&Aを見ていきましょう。


有効期限切れで失効したポイントの処理はどうするのですか?

失効したポイントは、失効したタイミングで売上計上して繰延収益を取り崩します。


ポイントの還元率は高くしづらくなりますか?

発行されたポイントは企業の負債として計上され、将来の収益認識がそのポイントが使用されたタイミングに延期されることになります。このため、高い還元率を維持すると、企業の財務状況やキャッシュフローに大きな負担をかける可能性があります。

その場合でも、還元率を抑えつつ、ポイントの利用方法を多様化したり、ユーザーにとって価値のある特典やサービスを提供したりすることで、顧客満足度を維持し、ロイヤルティを強化することができます。


ポイント制度のある全ての企業が対象ですか?

購入金額に応じてポイントを付与している場合のみ対象です。ポイント制度があっても購入金額に応じてポイントを付与しているのでなければ対象にはなりません。


マーケティング戦略にはどのような影響がありますか?

従来の基準下のポイントプログラムは主に売上促進を目的としていましたが、新収益認識基準ではポイントの価値が負債として計上されるため、短期的な売上増加だけでなく長期的な顧客ロイヤルティの強化に重点を置く施策が求められます。

例えば、ポイントで交換できる特別なアイテムを用意する、共通ポイントへ交換できるようにするなど、顧客エンゲージメントを高める新たな方法を検討することが重要です。


まとめ

新収益認識基準導入後は、ポイントに関して従来までのような引当金での会計処理はできなくなりました。売上から差し引いて繰延収益として計上します。利用時または失効時に繰延収益を取り崩して売上計上できる仕組みです。すぐに売上計上できなくなったことで、ポイントプログラムの運用にも影響が出ています。これから自社でポイントプログラムの導入を検討している企業は、新収益認識基準に対応しなければなりません。

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T.A
T.A
2015年頃からWebライターとして活動中。オールジャンルで記事を執筆しており、中でもスマホやネットサービスなどの記事が得意です。 お得なサービスや便利なサービスには常にアンテナを張っており、2010年頃からポイントサイトを利用。ポイントの二重取り・三重取りなども普段から実践。 普段のポイ活で得た知識や経験を活かして、情報発信していきます。

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