ポイントサービスを提供する事業者が理解すべき法律とは?注意点も解説
ポイントサービスはユーザーの囲い込みなどのメリットを得られる施策です。しかし、関連する法律を理解して、適正に運用しなければ法的リスクが高まるおそれもあります。本記事では、ポイントサービスを提供する事業者が理解すべき法律や注意点を解説します。
この記事のポイント
ポイント1 ポイントサービスを提供する事業者が注意すべき法律が理解できる
ポイント2 ポイントに有効期限を設ける際の注意点がわかる
ポイント3 ポイントサービスの廃止や終了に関する注意点がわかる
目次[非表示]
- 1.まずは消費者保護のために定められた3つの法律を正しく理解
- 2.ポイントに有効期限を設ける際の3つの注意点
- 2.1.1.資金決済法における法的規制の回避
- 2.2.2.短すぎる有効期限
- 2.3.3.利用期限の注意喚起
- 3.ポイントサービスの廃止や終了に関する3つの注意点
- 3.1.1.資金決済法における払戻義務の遵守
- 3.2.2.サービス終了を見据えた設計
- 3.3.3.予告期間を設けた解約告知
- 4.まとめ
まずは消費者保護のために定められた3つの法律を正しく理解
ポイントサービスを提供する事業者が注意すべき法律には、以下の3つが挙げられます。
- 資金決済法
- 景品表示法
- 消費者契約法
いずれも利用者あるいは消費者を保護するために定められた法律であり、ポイントサービスを提供する事業者側は正しく理解しておかなければなりません。それぞれに分けて解説します。
1.資金決済法
資金決済法は、決済に関するサービスに規制を設けることで、利用者を保護するための法律です。
規制の対象には暗号資産や資金移動業などが含まれますが、ポイントサービスと関連するのは「前払式支払手段」についてです。例として、商品券や交通系ICカードへのチャージなどが挙げられます。
さらに、「前払式支払手段」は取引に使える相手によっても分類され、発行者との間だけで使えるものを「自家型」と呼びます。例えば、ゲーム内でのみ利用できるポイントやコイン、発行事業者との関係でのみ利用できる商品券などです。
一方、発行者以外との間でも決済に使用できる交通系電子マネーや商品券などは「第三者型」と呼びます。
どちらの場合も、前払支払手段発行者には、次のような義務が課されます。
- 表示義務
- 報告義務
- 供託義務
特に、供託義務については、基準日において発行残高が一千万円を超える場合、未使用残高の半分以上の金額を法務局に供託しなければなりません。
2.景品表示法
景品表示法は、広告やそれに付随する景品類などを規制する法律です。この法律は、表示と景品類にそれぞれ規制が設けられており、ポイントサービスと関連するのは「景品類」に関する部分です。
景品表示法で指す「景品類」とは、消費者が商品を購入した際に対価として得られる経済的利益を意味します。ポイントサービスにおいては、発行者との間でだけ利用できるポイントは「値引き」の一種と解釈され対象外となる可能性がありますが、発行者以外との決済にもポイントが使える場合は、景品表示法の規制対象となります。この場合は、景品類、つまりポイントの金額に上限が設けられます。
3.消費者契約法
消費者契約法は、不当な契約や勧誘から消費者を保護するための法律です。この法律では、消費者が一方的に不利になるような契約条項は無効となるよう定めています。
そのため、ポイントサービスにおいては、有効期限の定め方に注意が必要です。原則として、有効期限は発行者が自由に設定できるので、無期限としても、一年としても問題はありません。しかし、ポイントを入手しても利用が難しいような極端に短い期間に設定されている場合などは、消費者にとって一方的に不利益な契約条項であるとして、無効とされる可能性があります。
また、事前予告せずにサービス内容を変更したり休止したりするなども、消費者保護の観点から、無効とされる可能性があります。
ポイントに有効期限を設ける際の3つの注意点
ポイントに有効期限を設ける際の注意点には、以下の3つが挙げられます。
- 資金決済法における法的規制の回避
- 短すぎる有効期限
- 利用期限の注意喚起
多くの場合、ポイントには有効期限を設定します。しかし、消費者にとって不利になるような定め方は、法的リスクを高めることにもつながりかねません。ここではそれぞれに分けて注意点を解説します。
1.資金決済法における法的規制の回避
ポイントの有効期限の設定によって、資金決済法における法的規制を回避することができます。
前払式支払手段に該当するポイントサービスのうち、有効期限が6ヶ月以上あるものは資金決済法の規制対象となり、さまざまな義務が課されます。逆にいうと、有効期限を「6ヶ月以内」とすれば、前払式支払手段に該当するポイントサービスでも資金決済法の適用範囲外となるので、提供側のメリットは大きいと言えるでしょう。
ただし、サービスの内容、種類によって、有効期限6ヶ月を短いと感じるか、十分だと感じるかは変わってきます。法的規制を回避するために有効期限を6ヶ月と定めてポイントサービスを導入するメリットがあるかどうかは、慎重に判断しなければなりません。
2.短すぎる有効期限
資金決済法の適用範囲に関わらず、ポイントの有効期限はじっくり考慮したい部分です。短すぎると消費者に悪い印象を与えるおそれがあるだけでなく、前述のとおり、消費者契約法により無効とされる可能性もあります。そのため、ポイントサービスの利用実態を把握し、同サービスの平均的な利用者がポイントを消費する時期を調査した上で、適切な有効期限を定めるようにしましょう。
3.利用期限の注意喚起
ポイントの購入者に対して、利用期限を注意喚起することも重要です。ポイント利用に有効期限を定める場合は、目につきやすい場所に明記する必要があります。
また、定期的な有効期限の告知も必要です。利用期限の注意喚起を疎かにすると、損害賠償請求を受けたり、悪い企業イメージを与えてしまったりする可能性もあります。
ポイントサービスの廃止や終了に関する3つの注意点
何らかの理由によってポイントサービスを廃止せざるをえないケースもあるでしょう。ポイントサービスの廃止や終了に関する注意点としては、以下の3つが挙げられます。
- 資金決済法における払戻義務の遵守
- サービス終了を見据えた設計
- 予告期間を設けた解約告知
ポイントサービスに限らず、サービスの廃止・終了を念頭に置いて制度を設計しなければ、法的なリスクを背負うことになります。それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。
1.資金決済法における払戻義務の遵守
ポイントサービスの廃止や終了自体には、法的な規制や制限は設けられていません。サービス提供者の裁量の範囲となっています。
ただし、ポイントサービスを終了する際、資金決済法でいう「前払式支払手段」に当てはまり、且つ有効期限が6ヶ月以上ある場合は、サービス終了時の未使用残高を払い戻す義務があります。また、払い戻しには利用者からの手続きを必要とするため、その方法を速やかに周知しなければなりません。
2.サービス終了を見据えた設計
ポイントサービスは、不採算である以外にも、新サービスへの移行なども終了事由の1つとなります。その点を考慮し、提供する前から、終了を見据えて設計しておくことが重要です。
そのため、ポイントサービスを提供する際は、サービス終了時に消費者が不利益を被らないように規約を作成しましょう。規約に盛り込みたいポイントとして次のような項目が挙げられます。
- 終了時の払い戻し方法
- 終了時の予告期間
- 解約告知の方法
3.予告期間を設けた解約告知
ポイントサービスは、継続的に利用することを前提にした契約です。そのため、事業者の都合でサービスを終了する場合は、予告期間を設けたうえで解約告知することが重要となります。
特に、有料でポイントを発行した場合は、サービスの購入に使う予定の人が多くいるでしょう。そのため、急なサービスの停止や終了をしてしまうと、損害賠償請求や返金請求などの訴訟に発展するおそれもありますので、注意が必要です。
まとめ
ポイントサービスを提供する事業者が理解すべき法律や、注意点を解説しました。ポイントサービスは顧客の囲い込みなどのメリットもありますが、関連する法律に沿って制度設計しなければ、訴訟や企業イメージの低下などのリスクを高めます。ポイントの有効期限や利用規約などを適切に整備し、リスクを抑えた状態でポイントサービスを導入しましょう。
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監修者:弁護士 米山 清貴
米山法律事務所(豊島区南大塚)。中小企業支援や事業再生などの他、後見や相続などの資産承継をはじめ一般民事を幅広く取り扱っている。
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