顧客の囲い込みなどを目的に多くの企業が導入しているポイントサービス。そのメリットを活用し、自社の業務効率化やマーケティング施策に生かす方法があるという。その取り組みを取材した。
ジー・プラン 加藤秀三氏(プラットフォームビジネス部営業第二チーム チームリーダー)
顧客との接点を強化し、自社サービスの利用促進を図りたいと考えている企業は多いのではないか。ただ、会員プログラムや専用アプリケーションの提供を開始したところで、会員登録やダウンロードをしてもらえないと始まらない。継続利用にはユーザーが求める機能とコンテンツを提供するとともに、アプリを利用する動機付けとなる施策を取り入れることが重要だ。その仕掛けがポイントサービスだ。しかし、顧客が“ポイントをためたい”と思わなければ効果は発揮できず、自前で魅力的なポイントサービスを育て上げるにはコストや時間、ノウハウが必要だ。
160を超える提携企業網を生かしてポイントマーケティング活動を支援するジー・プランの加藤秀三氏(プラットフォームビジネス部 営業第二チーム チームリーダー)は、「ポイントを活用して利用を促すには、顧客の『ためるモチベーション』を高める必要があります。その方法として、共通ポイントを発行、または自社ポイントからの交換などがあるでしょう。利用を後押しし、顧客にポイントをためて使ってもらうという好循環を生むことで満足度を高めるべきです」と話す。
ジー・プランのポイントプラットフォーム「ポイント・コンセント」を活用して新たなビジネスを創出しようという動きがある。その仕掛け人がANA Digital Gateの松野来悠氏(マーケティングソリューション部 事業開発課 課長)だ。
コロナ禍、ANAグループ全体で新たな事業開発を模索する環境下、ANA Digital GateにおいてもANAのマイルという強力な武器を活用した新規事業を立ち上げ収益拡大につなげるべくジー・プランとも議論を重ねていた。そんな折、ANA Digital Gateの株主であるDGフィナンシャルテクノロジーに日立製作所が開発した生体認証技術・サービスを紹介され、一つのアイデアが生まれた。
「当社は以前からゴルフ場とのマイル提携を推進していました。そんな中、地方のゴルフ場は人手が足りず、運用面で困っているとの声を耳にしました。日立製作所の生体認証技術を活用した『スマートチェックインサービス』を導入すれば、利用者と従業員の負担を軽減できるのではと考えたのです」(松野氏)
多くのゴルフ場では、会員権を持っていない利用者はフロントで個人情報などを記帳する必要がある。受け付け手続きは利用者に記帳してもらう負担が生じる上、手書きの情報をPCに打ち込んだり管理したりする手間が従業員に発生する。
スマートチェックインサービスを使えば、利用者が初回利用時に個人情報と生体情報を登録することで2回目以降は端末に指をかざすだけでチェックインできる。利用者が記帳する手間と従業員の受け付け業務を軽減でき、ペーパーレス化にもつながる。
ANA Digital Gate 松野来悠氏(マーケティングソリューション部 事業開発課 課長)
初回利用時の登録方法。個人情報や指静脈を登録すると、2回目以降は指静脈の認証のみでチェックインできる
(出典:ANA Digital Gate、日立製作所、ジー・プラン ニュースリリース)
スマートチェックインサービスを導入しても、利用者に使ってもらわなければ意味がない。そこで松野氏は、利用者特典としてANAのマイルなどを付与する仕組みを検討した。その際にパートナーとして力を発揮したのがジー・プランのポイント・コンセントだ。
「ANAのマイルだけではなく、利用者のニーズに合ったポイントを用意することで付加価値が向上し、サービスを利用するきっかけを創出できます。今回の取り組みは、ANA Digital Gateさんが中心となって限られた予算と時間の中で検討しました。さまざまなポイントを発行するとなると、事業者同士の交渉や契約などが生じます。企業ごとにポイントシステムを連携させるなどの作業も必要です。ジー・プランが間に入ることでシステムの準備やパートナーの開拓に充てる時間を大幅に圧縮できると確信しました」(加藤氏)
生体認証を活用したチェックインサービスは利用者に響くのか――。市場価値を試す場となったのが、北海道の早来カントリー倶楽部だ。実証実験を2022年の7月4日~11月30日に実施した。
実証実験のイメージ(出典:ANA Digital Gate、日立製作所、ジー・プラン ニュースリリース)
松野氏は「実証実験の目的は3つあった」と振り返る。1つ目が、ゴルフ場の利用者目線で利便性や満足度向上につながるのか。2つ目は、ゴルフ場の受け付け業務の効率化やペーパーレス化に貢献するか。3つ目が、マイルやポイントの付与によって新規利用者の獲得やリピート率が向上するのかというマーケティングの効果を検証するものだ。
ジー・プランのポイント・コンセントを介して、本施策の特典の一つとしてセブン・カードサービスが運営する「nanacoポイント」を用意した。提携先マッチングはやみくもに行うものではない。ジー・プランは、企業が求めるターゲットや属性に合わせて連携先を考えている。
「nanacoポイントを特典に加えることでANAのマイルがカバーできなかった層にアプローチできると感じました。本施策の特典にふさわしい提携先を短期間でつないでもらいました」(松野氏)
約5カ月にわたって実施した実証実験の結果は、「満足なものになった」と松野氏は振り返る。
「実験終了後のアンケートでは、スマートチェックインサービス利用者の満足度は約70%、『今後もこのサービスを利用したい』と回答した人は約90%に上りました。ゴルフ場の利用者に、将来性や利便性の高さを実感してもらえたと受け止めています。マイルやポイントがたまることをきっかけに足を運んだ利用者も多く、マーケティングの観点からも効果的だったと感じています」(松野氏)
さまざまなジャンルやカテゴリーでサービスの拡大を進めていけば、対象となる利用者属性も変わる。多様なポイント事業者との連携もサービスを拡充する上で重要なポイントになるだろう。
「ジー・プランさんを経由してさまざまなポイント事業者と連携できる点は、ANA Digital Gateとしても心強いと感じています。自社で交渉するとなると工数や条件面で折り合いがつかないなど、多くの障壁があるはずです。あらゆるポイント事業者を網羅し、異なるシステム同士の接続などを担ってくれるジー・プランさんは心強いパートナーだと感じています」(松野氏)
「今回の実証実験を通じて、ポイントやマイルをうまく活用することで顧客の行動喚起につながると確信しました。今後も、企業が展開するあらゆるサービスとジー・プランのポイント・コンセントを組み合わせることで新たな価値を生み出すお手伝いをしたいと考えています」(加藤氏)
ポイントサービスによって顧客の行動変容が可能になる。そんな新たな道筋が見えてきた。新規ビジネスを始める際には、ポイントプラットフォーム「ポイント・コンセント」を参考にしてみてはいかがだろうか。
転載元:TechTarget Japan
2024年8月7日掲載記事より転載
本記事は TechTarget Japan より許諾を得て掲載しています
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